*注意)この「べじぱみゅの学習メモ」のカテゴリー記事は、ワタクシ自身がこれまでに勉強したいろいろな項目について、テキストにあんまり書いてない内容などを勝手に妄想したメモです。
ワタクシ自身の備忘録のために書いており「初学者にわかりやすく説明する」というものではございません。
導入なしに唐突に話が始まり、おそらく意味不明な文章かもしれません。
しかし、せっかく考えたことなので、記事の内容がもし誰か1人でもお役に立てれば幸いです。

ガッツリ理系の題材


今回はデータ解析数学?の題材として、
ARXPS(角度分解 X 線光電子分光法)を取り上げます。以前の記事でごく簡単に取り上げましたが、もっとディープなお話です。
 
ARXPSの原理


ARXPS は、この図のように X 線を照射した箇所からの光電子の取り出し角を変えて 光電子強度のデータを取得します。検出器側が 2 次元状になっていて複数角度を取り込めるパターンと、サンプルをチルトしながら分析を繰り返す、というパターンがあります。

左のように、サンプルに対して水平に近い角度で光電子を取り出した場合は比較的浅い領域の情報が得られ、右のように垂直に近い角度で光電子を取り出した場合は比較的深い(といっても nmオーダーですが)領域の情報が得られます。XPS 信号はあくまで試料の浅い領域から深い領域までで発生した信号の合計ですが、上記の理屈により角度ごとのXPS 信号は「深さ」に関する情報を持っているわけです。

「プロファイル」が欲しい

ARXPS のデータから「浅いところには〇〇が多く、深いところには△△が多い」というような「定性的な」議論は容易にできますが、実際に「深さプロファイル」を構成することは容易ではありません(というより、そもそも完璧な方法はありません)。

今回の記事では、ARXPS のデータから何とかしてそれなりの深さプロファイルをつくってみることを考えます。 「深さプロファイルを作る」というよりは「適当にプロファイルを作り、それが実験値に合うか確認。違ったら作り直す」というノリです。
 
ARXPS により、J 個の角度ごとに I 種類のピークについて強度を取得したとします。すると、ARXPS のデータはこういう具合に表現できます。

実験データ

ピーク数×角度数分のデータを 1 行に並べたものです。あとの処理の都合のため、こういう風に並べておきます。

さて、このデータからプロファイルを作りたいのですが、これって数学的にはいわゆる「不良設定問題」と呼ばれる「変数の数より方程式の数が少ない」というパターンです。実験データは数個~せいぜい 100 個程度ですが、プロファイルとして決めるべき変数(深さごとの濃度)は数百個やそれ以上、となります。 

「理論式」の助けを借りよう!
 
「データからプロファイルを作る」は難しいのですが、「プロファイルが決まったときにどういうデータになるか計算する」は比較的容易で、一般的な XPS のテキストにある知識だけで可能です。

理論値を考えるための構造


このように、サンプルが極めて薄い(例えば 0.1nm 程度の)K 個の層から成っていると仮定します。こうすると K×I 個の元素濃度が、求めたい変数となります。

それぞれの層から発生した XPS 光電子は試料内で非弾性散乱され減衰していきます。XPSでは基本的に、無衝突でサンプル表面から飛び出した光電子だけを考慮するので、k 番目の層で発生した光電子による検出信号への寄与(表面から飛び出す分)の理論値は

各層から発生する光電子

こう表現できます。実際に観測するのはそれぞれの層から発生した信号の合計値なので、最終的に観測される光電子強度の理論値は、後でいじくりたいので行列で表現しておくと

ARXPS強度とプロファイルとの関係
ARXPS強度とプロファイルとの関係(成分)
減衰行列の成分

こうなります。濃度プロファイル c は K×I 個の元素濃度を縦 1 列に並べたものです。

ここで例の「最小2 乗法」の発想を使います。仮定したプロファイルによる「データ理論値」と「実験データ」との偏差の2 乗を考えます。

偏差の2乗和

プロファイル c を変化させて、これをなるべく小さくしよう、というわけです。今回はこの問題に対して「数理計画法」を使います。というわけで次回から、XPS データを具体例にしつつ数理計画法の一端をお話します。


はっぴぃ理系らいふ、いぇい
ヽ(・ε・)人(・ε・)ノ キミモナカマニナロウゼ
   

【文責 べじぱみゅ