履歴書

先日ワタクシ、英語の投稿論文をsubmit致しました。

1  0  年  ぶ  り  に  。

自分でもちょっと驚いて何度も確認したのですが、前回論文を出したのは2010年なので、やっぱり10年ぶりです。当時はDの学生でした。

ふつうこういう所で論文の報告をする時って「アクセプトされました」が普通で「サブミット」の段階で報告するのは重要視されません。しかし今回の記事を書くにあたっては、出した時点で重要なのです。論文を出すような仕事をするようになった、ということで。(もちろんアクセプトされたいしされると思ってますが、結果は二の次)

さて、ガチ研究勢にとっては「君は10年もの間何をしていたんだ?」と当然なるわけですが、思い返してみると

1:Dの後半で論文にするような成果が出なかった期間
2:1社目の大企業でパワポエンジニアをしていた期間
3:2社目の中小企業で脳のリハビリをしていた期間
4:現職で成果が出るまでの期間


上記を合計すると確かに10年経ってました。

Twitter上でも多くの、製造業勤務の理系修士卒や博士卒とみられる方々が「なんで院まで出てこんなしょうもない仕事しなきゃいけないんだ。研究したい」と嘆いておられます。私も一社目大企業では割とそんな感じでした。転職そのものの事実分析に関しては以前書きましたが、今回は「研究」に対する葛藤つまりメンタルの部分をメインに書いてみます。

やっぱり研究してみたい

一社目のパワポエンジニア業務には四年半従事して転職しました。退職の直接の理由は 1社目大企業の悪口に書いたように不正指示ですが、やはり多くの方と同様、根本には「研究開発してみたいな~」という気持ちはずっとありました。

新卒大企業ではいわゆる「事業部」のなかの「技術部」配属で、メイン業務はある量産製品のコストダウンでした。(誤解のないように言っておくと、事業部でもちゃんと技術開発してる所はあります。担当する製品や、会社の方針により様々です)

もちろん量産しているので設計はほとんど変えられず、やることといえば購入部材を安くすることだけです。同じ仕様の部材を安く製造できるメーカーを探したり、時には現行納入先の社外秘技術データを新興メーカーに横流しして安く作らせたり(コンプライアンス!)、最終的には抜いてはいけない部品を抜く、という技術的には何のおもしろみもない(いつリコールになるか怯えるスリリングな)活動に四年以上明け暮れました。

自分の頭で(科学技術的な)工夫をする、とう仕事が皆無で「ああ、私は博士まで行ってなんでこんなことしなきゃいけないんだ」と凹んでいる中、一方で学卒や修士卒の同期が「研究開発本部」に配属されいろいろと新しい製品の研究開発に励むのを見てモヤモヤがつのっていくのでした。

大企業ならたいてい「研究成果報告会」的な年イチのお祭りがあるわけですが、そんなお祭りを見に行くとかなりメンタルにぐさっと来ました。「こいつらは研究やってるのに、オレ何やってんだろう」って。隣の芝かもしれませんがね。

(※そもそも研究開発に携わってない当時の私にはそのお祭りの案内メールすら来ず、日程は研究配属の同期からLINEで聞きました。上司には「有給」と申請して電車賃自腹で発表会に行きました)

ベースにそういうモヤモヤがあったので、不正指示の連続から辞めるときも全く心残りはありませんでした。

どうやって転職する?

転職するのはいいのですが、転職もなかなか厳しいものです。2度の転職の分析に書いたように、中途採用は基本的に「分野ピッタリ即戦力」しか相手にされません。

新卒大企業で私の従事していた分野は研究開発的にはやや落ち目の分野で、ビジネス的にはもはや「いかに安くするか」だけの勝負になっていました。というわけでその分野の「研究開発」の求人はありませんでした。(落ち目の分野なのでそもそも求人自体が稀でしたがね)

ここでまた葛藤があります。分野自体には愛着があるけど、もうこの分野で「研究」(というよりもはや「頭脳労働」)はできない。というわけでどうしても頭脳労働に拘るなら分野を変えてしまう必要がありました。だがしかし、分野を変えようとすると今度はマッチングが取れず採用されません。苦肉の策として私がとった作戦は

ブラック企業に一旦入る

でした。当時はそこまで高尚な作戦のつもりではなかった(一社目の製品リコールの責任を取らされる前にとにかくどこでもいいから逃げたかった)のですが、結果的にはこの決断が今につながっています。結果オーライなので人には胸を張って勧めませんが。

ブラック中小企業なら入口がガバガバで誰でも入れます。当時何十社受けて面接にすら進めなかった私も、このとあるブラック企業には一発合格でした。(一発合格の時点で怪しむべきだったんですがね・・・)

ブラックではあったが

この二社目はやや畑違いではありましたが、勉強すればちゃんとついて行けました。労働環境や人間関係は確かにブラックではありましたが(といってもたぶん世の中のポスドクなどはもっとひどいと思う)、仕事内容自体はちゃんと頭脳労働で、一社目の業務のようにニセ科学を活用することはなく由緒正しい数学や物理をふんだんに使って仕事ができたのでその点では楽しかったです。

一社目の四年半で完全に脳ミソが腐っていたので、結果的に二社目にいた期間は脳ミソのリハビリになったと思っています。英語論文投稿、とまでは行きませんでしたが、国内のちっちゃい学会で2回ほど口頭発表することができました。

(ちなみに一社目大企業時代は外部発表機会ゼロ。ニセ科学ばかりで何も科学的なものを生み出してないのだから当たり前ですが)

しかし、この二社目も2年ぐらいで辞めました。一番の理由は「やっぱりブラックだったから」ですが、今回のテーマである「研究」の観点から言うと「リソースが足りない」っていうのが大きいです。お金というより何か困ったときに質問する人がいないわけです。プログラミングひとつ取っても、当時の社内にまともなプログラムが書ける人なんて皆無だったし、そもそも入口がガバガバなだけあって全体的に「学力」が低いので「議論」ができないわけです。私はスーパーマンではないので1人で研究しててもあんまり進みませんでした。

ようやく論文へ

そして現職、BtoB大企業に転職したわけですが、この転職は1回目の転職に比べ格段に簡単でした。二社目のブラック中小企業と分野が同じだったので。なので推奨はされませんが、どうしても行きたい分野があるが畑違いで直接は採用されない場合、いったんその分野のブラック企業に入る、ってのも裏技としてアリかもしれません。

さすが大企業ということで、(こいついる意味ある?ってオッサンももちろん多いけど)ちゃんと質問できる人が社内にたくさんいます。お恥ずかしながら今の仕事に必需品になってるPythonも現職で同僚に教わって初めて身につけたものだし、データがほしけりゃ高い装置はいくらでもあるし、扱う製品も実に多岐にわたり経験値はいくらでも上げられるし。

日系大企業は、埋もれようと思えばいくらでも埋もれられますが、逆に「やってやろう」と思えば(身分が保証されたままの状態で!)いくらでもチャレンジできる所だ、と私は思っています。この点は一社目の大企業でも同じでしたが、通常業務があまりに悲惨すぎてチャレンジする気が起こらなかっただけです。

現職への入社から1年以上かかりましたが、社会人になって初めての「研究」っぽいお仕事、なんとか論文投稿できるような成果がちらほら出始めました。どういうペースになるかはわかりませんが、コンスタントに論文も出していきたいと思います。

もう一回就活するなら?

10年のブランクののち無事に?当初の望みである研究のお仕事にありつけたわけですが、では最後に「もし10年前に戻れるなら?」を考えてみます。「GAFAに行く」とかはナシとすれば、単純に考えて新卒の段階で今の仕事に直接応募する、と考えたくなるでしょう。しかし、結論としては

同じ道をたどる

しかないと思っています。というのも、今の企業に新卒で入ると(まず受かるかは置いといて)、現職企業での「新卒ガチャ」が発生するので今の部門に来れず、それこそ私が行った新卒大企業と同じように意味不明な仕事をさせられて辞めてしまったかもしれません。 今の職種に確実にありつくには中途採用を狙うしかなく、あえて何らかの寄り道をする必要があるわけです。

前の段落までの情報だと現職企業を誉めているように見えてしまいますがそうではなく、あくまで現職で研究のお仕事に就けているから楽しいのであって、変な部門に飛ばされたらたぶんつまらないし、もしかしたら新卒大企業でも研究部門に配属されていたら辞めてなかったかもしれません。

もう一度言います。今の日系大企業で希望職種に確実に採用されるには中途採用しかありません。メーカー志望で「研究開発がしたい!」という学生は多いです。そりゃ当然で、研究室で研究マジメにやってれば誰でもそれなりに愛着がわくもので、むしろ「研究は興味ないっすね」という学生がいたら「何かイヤなことでもあったの?」と聞きたくなります。

たまたま運よく志望の研究開発部門に配属になればそれでいいですが、運ゲーを外してそうじゃない部門(特に、もはや理系でなくてもできちゃう仕事)に配属になったときにどうするか。学生のときの視野なんて極めて狭いもので、たまたまガチャで配属された部門の仕事が気に入って続ける人もいるでしょう。あの新卒大企業の同期でも院卒で文系のお仕事に配属された方もいますが、今はそれにハマってバリバリやってたりします。

忌み嫌われることの多い「配属ガチャ」の数少ないメリットです。「自分が当初予想もしなかった興味深い仕事に出会える」っていう。

でも、私みたいに「やっぱり研究したい!」という気持ちが切れない人も決して少なくないでしょう。そういう人は迷わず転職しましょう。今の若者は70歳80歳まで働かなければなりません。20代の段階で生涯の仕事を決め、成果を焦る必要なんてないです。私は10年ブランクあっても研究に戻れましたし、30年あったって戻れる人もいるかもしれません。

優等生的なコメントをしておくと、一見キャリアに傷をつけただけに見える新卒大企業での四年半も一応今に活きているといえば活きています。研究するにしても最終的には量産に応用するわけですから、泥臭い現場を知らないと上手くできません。現場から(ムチャな)相談を受けることも多いですが、新卒から研究一本の社員(「は?何言ってんだこいつ」みたいな横柄な態度を取りがち)に比べて「あーそれあるある」とニコニコしながら話を聞けます笑

というわけで、配属ガチャを外した大多数の?若手社員の皆様、仕事人生はまだまだ長いのでそんなに落ち込まず、今の仕事を頑張るなりあっさり転職を検討するなり、それぞれの進路を切り開いてください。50年続く仕事人生、ちょっとぐらい寄り道したっていいじゃないですか。

新卒でする仕事は「会社ってこんなもんか」を学ぶ単なる職業訓練で、本当にやりたい仕事は転職で見つける、ってスタンスでいいと思います。ではまた。


はっぴぃ理系らいふ、いぇい
ヽ(・ε・)人(・ε・)ノ キミモナカマニナロウゼ
   

【文責 べじぱみゅ】