退職面談ソムリエ

私は以前の記事でも申し上げましたが、転職を2回しています(大手製造業⇒中小メーカー⇒現職・大手製造業)。

会社にもよるとは思いますが、基本的に会社を辞める際には多くの場合「退職面談」(名称はいろいろ)というカテゴリーの面談があります。私の場合は新卒大企業で4回(人)、中小で3回(人)、計7回(人)の面談を経験しました。

そういうわけでここでは勝手に「退職面談ソムリエ」を名乗らせていただきます。

ソムリエ


退職面談は(残る側にとって)大事!

今日はこの「退職面談」についていろいろ書いてみます。ただし、今回の記事の対象は私のような「会社を辞める人」つまり若手社員ではなくむしろ「部下に辞められる人」つまり管理職です。退職面談ソムリエとして「退職面談とはどうある(遂行する)べきか」を考えてみます。

あまり「退職面談はどう行うべきか」を日頃から考えている管理職はいないと思います。しかし、ちょっと待ってください。退職面談って実はすごく大事なイベントです。

退職面談について考えることは、職場について考える一番の近道

といっても過言ではないでしょう。なぜかと言うと

退職面談は、職場の実態が最もにじみ出るイベントであり、また職場を改善する最大のチャンス

だからです。これは恋人や夫婦を考えてみればわかるでしょう。仲良しでうまくいっている間は、あまりお互いの悪い部分は見えにくいですし、仮に悪い部分が見えたとしても、今後の関係に亀裂が入るのを恐れて言えないこともあるでしょう。しかし「もう別れる!」となれば話は別です。今後のことを気にする必要がないので、お互い言いたい放題悪口を言えるでしょう。

退職面談も同じです。仕事が絶好調で進んでいる間は言えなかったことでも、もう辞めるとなれば実はスムーズに言える/聞き出せるのです。

というわけで退職面談ソムリエの私が、個人的な視点でいろいろ考えてみます。

ポイントは2つだけ!

私の考えでは、退職面談に関して、退職者(部下)の視点からの「採点項目」は以下の2つです。

1:引き止めないか(配点20点)
2:職場改善の努力が見えるか(配点60点)
3:誠意を見せているか(配点20点)

細かな数字は異論あれど、こんなイメージです。

これに加え「人として真っ当な態度で臨んでいるか」もあります。聞いた例では「お前はどこに行ってもダメだぞ!」など罵声を浴びせる、恫喝する、殴るなど。ただしこれは当たり前のことで、もしこれがダメならそもそも採点価値がないので点数は設けていません。幸い私の場合は7回とも、これがダメなパターンはありませんでした。

1. 引き止めないで!

1つ目の「引き止めない」、これは意外と盲点です。退職者は、当たり前ですが「辞めようと検討している」なんていう段階では上司に絶対報告しません。じっくり悩んだ上で転職を決断し、転職エージェントなどとやり取りし、仕事の合間をぬってわざわざ面接に挑み、次の職を勝ち取り、「〇〇日から入社してください」という約束を取り付けた状態で初めて「辞めます」と言ってきます。

その状態で面談して「退職」の決断が覆るはずはありません。(給料3倍にする!なんていうアクロバティックなことをすれば別ですが、まずムリでしょう)

ですから「目の前の部下がどうやったら思いとどまるか」なんてことを考えるのは時間のムダです。ムダであるだけではなく、退職面談の最も重要な要素である2が疎かになります「とにかく彼を引き留める!」だけを頭に置いてしまうと

「わかった。君はもっと開発がしたいのだね。それなら開発の仕事の割合を増やそう。今君が持ってる雑用はすべてBさんに振るから」

なんていう、スーパー局所最適解であり職場全体としては何の改善にもなってない案を出してしまいます。

さらに、これに関連して気を付けるべきは、

退職者と他の部下は(あなたが思っているより)すごく仲良し

というケースもあることです。上記のケースで、もし退職者とBさんが仲良しだったらどうしますか?(ちなみに私は、退職面談の内容を同期にベラベラ言いふらしました)退職面談の内容を聞いたBさんは

「オレ捨て駒扱いなんだ。転職しよ」

となってしまいます。発言には気をつけましょう。

2. とにかくカイゼン!

退職面談をやる最大の「意義」は2つ目です。言い方はいろいろあります。広く言えば「職場の改善につなげる」ですが、それをキャッチーに言うと「次の退職者を出さない」となります。これをしないと、わざわざ手間暇かけて面談をする意味は皆無となります。

退職者は多かれ少なかれ、職場に不満を持っています。せっかく後腐れなく話せるチャンスですので、なるべく多くを引き出して参考にしましょう。不満の内容がその人固有のもの、という場合もありますが実際には稀で、多くの場合その不満は他の部下も同様に抱いているものです。面談後にすぐ芽を摘むことができれば次の退職者が出なくなるかもしれませんし、何も策を打たなければ数カ月以内に同じ理由で別の部下が退職することになるでしょう。

人が1人抜けると、当然ながら残った人の負担は重くなるわけでただでさえ不満因子が増える(ドミノ退職の発生リスクが高まる)わけですから、摘める芽は早期に摘んでおかなければなりません。

最近流行りの「感染爆発」と似ていて、私が新卒大企業を辞めた時のような数ヶ月に1人ずつ退職」みたいな状況になったらもうどうやっても止められません。部門の崩壊をじっと待つのみとなります。具体的な数字を言うのは難しいですが例えば「10人の部署で最初の1人の退職者が出た」ぐらいの比較的余裕のある段階で絶対に止めましょう。

ちなみに本来は、面談で得た不満をちゃんと改善につなげたか、まで評価が必要ですが、退職者は残念ながらそれを見届けられないので、退職者の評価は面談時の姿勢だけになります。

3. にんげんだもの!

3つ目「誠意」はもともと書くつもりがなかった指標ですが、1社目と2社目に差をつけるために導入しました。

これだけだと曖昧ですが、要は「さっさと終わらせようとしていないか」「雑談などで話をそらしていないか」です。退職面談は基本的にネガティブなイベントで、場合によっては管理職が心に傷を負う可能性があります。そのためつい、さっさと切り上げて波風立てず穏便に済ませようとしたくなります。

しかし退職面談は自分自身の課題を浮き彫りにする貴重なイベントです。たかが数十分か長くても数時間です。そのくらいは、自分の罪?にしっかり向き合いましょう。

退職面談格付け!

さて、上記を踏まえて私が経験した7回(人)の退職面談を採点してみましょう。

<新卒大企業>
課長:10点(0,0,10)
部長:60点(0,40,20)
事業部長:30点(20,0,10)
総務部長:50点(20,20,10)

<2社目中小>
課長:20点(20,0,0)
取締役:10点(10,0,0)
総務部長:90点(20,50,20)

こんな感じです。総じて低い点数で、唯一2社目の総務部長だけ高得点です。一人一人解説していきます。


新卒大企業課長
(引止0点・改善0点・誠意10点)

最初にこちらからメールで「業務に関して相談がございます」と連絡を入れ、その日の定時後に別室に呼び出され面談実施。たしか2時間ぐらいやりました(眠かった)が、ほとんどが意味のない話で点数としては0点です。2時間の間しきりに「考えなおしてくれないか」と言ってきたので「引き止めしないか」指標は0点です。

さらにこちらは退職の理由として「度重なる不正指示」「全社的な品質軽視の文化」などを挙げたのですが課長は「やっぱり給料が不満なんかな?」などと「え?私の話聞いてた?」というあまりに頓珍漢な受け答えに終始しました(私は2時間の間、給料については一言も触れていません)。職場改善などする気はないのでしょう。

ただ一応、終始申し訳なさそうにはしていた(シュンとしてた)ので誠意だけ10点あげます。


新卒大企業部長
(引止0点・改善40点・誠意20点)

上記クソ面談の次に実施。30分ぐらいだったと記憶していますが、同じく引き止めが続いたのでそっちは0点です。一応私の不満については真摯に耳を傾けて理解していただいたようで「もし給料に不満がないなら、今後改善していくので残ってくれないか」を繰り返していました。

この方は、私が退職を申し出る直前に他部門から異動されてきて、職場で何が(どんな悲惨なことが)起こっているのか把握できないまま、部長としての最初の仕事が私の退職面談、という悲惨な状況でした。まあ可哀想なので改善40点、誠意は満点あげます、というところです。


新卒大企業事業部長
(引止20点・改善0点・誠意10点)

ほぼ幹部です。これも30分ぐらいでした。実際ここまで来ると相手も「引き止め」に関しては諦めてくるのか「残ってくれ」みたいな言及はなかったと記憶しています。

一方でやはり、私が申しあげた退職理由「不正指示」「品質軽視」については「まあ不正はともかく~」などと直接の言及を避け、外堀の弁解に終始したため改善は0点、とさせていただきます。この世代にありがちなのかもしれませんがなぜか面談中に「今度飲みにいこうや」を連発していました。絶対嫌です。


新卒大企業総務部長
(引止20点・改善20点・誠意10点)

いわゆる「人事部」の類と考えてよいです。これは1時間ぐらいあったと記憶しています。私の場合は実は直前(2か月前)に同じ部門の後輩が辞めていて同じ総務部長と面談していたため、総務部長にもその記憶が強かったようです。冒頭に「あの・・やっぱり〇〇さん(前述の課長)ですか?」と尋ねてきました。後輩ちゃんが課長のことをボロカスに言ったのでしょう。

聞くと総務部長様、その課長のものを去った社員を他にもたくさん知ってるようで、その点では話が弾みました。真摯に話は聞いていただきましたが、話の流れ的に終始課長個人の問題点がメインになってしまい、職場全体の問題にあまり切り込めなかった感はあります。


中小課長
(引止20点・改善0点・誠意0点)

こちらは新卒大企業課長と一転、朝イチの実施。別室に呼び出されましたが、ここに挙げた7回の中で最速、記憶では2分ぐらいで終了!長くやればいいってもんじゃないですが、さすがに短すぎ!誠意のカケラも感じません。

「辞めます」というと第一声が「まあそんな気はしてた。(次の職は)大手か?」とだけ。私はお人よしにも、職場の問題点を指摘してあげようと箇条書きにしたメモまで用意していたのですがメモを出すヒマもなくあっさり終了し、私はモヤモヤだけが募ったのでした。


中小取締役
(引止10点・改善0点・誠意0点)

上記の後昼イチに実施。小さな会社なので、課長の次は一気に取締役まで行きました。これも5分ぐらいで終了。これは一番いけないパターンなのですが、面談中に普通に仕事の話(業務連絡&雑談)を放り込んできました。「〇〇の件どうなってる?」的なやつ。こっちはもう辞めるって言ってんだよ。

5分の中に1回だけ「(勤続)短いね~もうちょっといてくれてもいいんじゃない?」と一応の「引き止め」が発生しましたがどうでもいいです。


中小総務部長
(引止20点・改善50点・誠意20点)

私が7個の面談で唯一高得点をつけたものです。退職面談はこうでなくっちゃ!

中小では上記取締役の面談で事実上終わりだったのですが、総務部長が直々に私にメールをしてきて「今後の改善のために、べじさんが思っている問題点を聞かせてほしい」と。これはすごいと思います。7個の中で「問題点を聞かせてほしい」と明言したのはこの人だけです。

こういう対応をされると私もぐっときて、2つ前の課長面談で出せなかったメモをもう一回取り出してさらにブラッシュアップし面談に臨みました。たしか90分ぐらいだったと記憶していますが、かなり建設的な議論ができました。総務の方なので技術的な話はしてませんが、評価指標のあるべき姿とか、部門間の仕事のやりとりについてとか。90分話していて「これ全部実現できたら残っていいかもな」ぐらいに思える話が出ました。

向こうから「問題点を聞かせてほしい」という言われ方をするとこっちも「悪口」の言い方ではなく論理的に「どこに問題があるのか」を冷静に話すことに努めるようになります。本当は満点あげてもよかったのですが、あの会社は(中小にありがちですが)前述の取締役の権限が強すぎるので、失礼ながら性格のいい総務部長さんではおそらく実現はしないだろうな、という悲観で10点引きました。

結局当たり前!

さて、だらだらと話してきましたが改めて退職面談のポイントをまとめますと

・引き止めない!
・職場改善につなげる!
・誠意をもって!

です。1つ目は意外とやっちゃいますが、2つ目は実は当たり前のことです。こんな記事でわざわざ指摘しなくても、特別な意識がなくても自然にできなきゃいけないことです。普段から「職場を改善するにはどうすればいいか」とアンテナを張り巡らせていれば、部下に退職を申し出られた際にも(多少の動揺はあるでしょうが)「これを改善のチャンスにしよう!」となるはずなのです。きつい言い方ですが

退職面談でヘマをやらかす管理職は、日頃から職場のことをマジメに考えていない

と言ってもよいでしょう。私が上記で「職場改善」に0点をつけた4名に関しては、日ごろのずさん/行き当たりばったりな組織運営姿勢がそのまま退職面談に現れてしまった、と言ってよいでしょう。冒頭私は「退職面談について考えることは、職場について考える一番の近道」と申し上げましたが、それを感じていただければと思います。

この記事書いていて自分自身も正直怖いです。近い将来私も管理職になるわけですが、部下に退職を申し出られたら、記事では偉そうなこと書いてるくせに全力で引き止めにいっちゃいそうな気がします。そこはぐっとこらえて、あくまで冷静に、常に全体最適を考え行動するクセ&覚悟をつけておかなければ、と思います。ではまた。


はっぴぃ理系らいふ、いぇい
ヽ(・ε・)人(・ε・)ノ キミモナカマニナロウゼ
   

【文責 べじぱみゅ】