べじぱみゅのだらだら微分話、
応用編その2、最後のテーマは
2階微分
です。高校生の方にはけっこう難しいので、大学生向けです。
もちろん高校生の方でも、ご興味があれば是非読んでみてください。
このテーマをわざわざ1回分かけてお話しする動機としては
ワタクシが昔から強く思っていたことがありまして
2階微分は超重要なのに
どんなテキストでも
あっさりとしか書かれていない
からです。「微分」そのものについては
いろいろとじっくり説明した文書があるのですが
この「2階微分」についてはじっくり書いてある文書を見たことがない。
2階微分は、表記の仕方としては

こんな感じになります。要は2回微分したものです。
微分なんか1回で十分!なんで2回もせなあかんねん!
と言いたくなるかもしれません。
これも残念ながら、高校生の段階では必要性がわかりにくいのですが
世の中の法則は、ことごとく
2階微分で表現されている
という事情があります。例えば物理の序盤で出てくる
「運動方程式」。高校の教科書では
F=ma
となっています。力Fと質量mがわかると、「加速度」aがわかる
というシロモノなのですが、実際には
「加速度」だけわかってもしょうがない
という場面がすごく多いのです。
何かのモノに力がかかるとして、そのモノの「加速度」だけ
わかったとしても、実はあんまりうれしくなくて
一番知りたいのは「そのモノがこのあとどこへ行ってしまうのか」
であることが圧倒的に多い。
ほんで実は「加速度」って「位置」の2階微分なので
さっきの運動方程式、数学的にちゃんと書くと

となります。高校ではこれを扱うことはないのですが
大学ではデフォルトになるので「ふ~ん」ぐらいに思っててください。
さて、その2階微分は、1階の(普通の)微分に比べて
意味がわかりにくいものです。1階の微分には
傾き
という、実体とリンクさせやすい明確な意味があります。
はたして2階微分にそういう意味があるのでしょうか?
あります!明確な意味があります!
そもそも微分の定義の意味は
ちょっとだけ進んで増えた分を
その進んだ分で割ったもの(つまり傾き)
です。このノリで2階微分の意味を考えると
ちょっとだけ進んで傾きが増えた分を
その進んだ分で割ったもの
となります。これをお絵かきで表現するとこんな感じ。

上図中央の「x」の両サイドで「傾き」がどれだけ変わったか
を考えます。xの両サイドの「傾き」を出すために
xから「ちょっとだけ進んだときの変化率」と
「ちょっとだけ戻ったときの変化率」を考えましょう。
で、それらが「増えた分」を、そのちょっとの距離で割る
という作業をするわけです。やってみると

こんな感じになりました。
分母はなにやら「ちょっとの距離」の2乗です。そっちは置いときます。
(実はこれ、けっこう面倒臭い議論になっちゃいます。
機会があれば別の会でお話ししましょう)
今回はこの分子を考えます。分子は何でしょう?
よ~く見ると

こうなりますね。最初の部分は、ちょっと右にいった点と
これの意味は明確で
両サイドの平均との差(の2倍)
です。以上より、2階微分の「図形的な意味」は
f(x)のある点と、そこから
「ちょっとだけ両サイドに行った2点の平均」
との差
を、ちょっとの距離の2乗で割ったもの
となります。復習ですが「1階微分」のほうは
f(x)のある点と、そこから
「ちょっとだけ進んだ点」
との差
を、ちょっとの距離で割ったもの
ノリがわかってきましたか?
高校数学では、2階微分は「凸」の判定に用います。
例えば2階微分がプラス、ということは

これがプラス、ということです。ということは
その点は、両サイド2点の平均より下にある
ということになります。逆に2階微分がマイナスの場合
その点は、両サイド2点の平均より上にある
ということになります。これをお絵かきするとこんな感じ。

いろいろなテキストで「2階微分による凸判定」
の話をするとき、たいていは
・2階微分は「傾きの変化率」
・「傾きの変化率が正」→「→↑」こんな状態→下に凸
・「傾きの変化率が負」→「→↓」こんな状態→上に凸
みたいな議論をしています。
これはこれで正しいのですが、なんとなく
ごまかされているというか、直接的じゃないというか。
それよりも、実は2階微分の式そのものが
「両サイドの平均との差」を表している、と言われたほうが
少なくともワタクシは直接的な気がして好きです。
この話を知ってると方程式にビビらなくなります。
たとえば、サインコサインの回でお話した弦の振動。
あれを大学生の数学を使って真面目に書くと

こんな感じになります(本当は「偏微分」なのですが、どっちでもいいです)
「y」は弦の垂直方向の「変位」です。
この式をいきなり見せられても、もちろん高校生はわからないし
理系の大学生だって、意味をちゃんと分かっている人は
おそらくほとんどいません。
今回の話が関係するのは右辺の2階微分のところです。
実は右辺は「F=ma」の「F」の部分に相当します。
「T」は弦の張力です。
今回の議論では、「2階微分」とは
「両サイドの平均との差」、もっと言うと
「上下への突き出具合」を表しています。
これを踏まえて右辺を日本語に翻訳すると
・上に突き出ている部分は下に引っ張られる
(2階微分がマイナス)
・下に突き出ている部分は上に引っ張られる
(2階微分がプラス)
と言っているだけです。
当たり前のことしか言ってません。
「2階微分」の意味を考えないで大人になってしまった人は
さっきの式を見ても、それを単なる「式」としか認識せず
意味もわからずだらだら計算するだけの劣化AIになってしまうのですが
ちゃんと意味を考えれば、すんなり受け入れられます。
最初にも言いましたが
2階微分は世の中の物理現象の方程式にことごとく登場する割に
数学のテキストで扱いが軽い(ちゃんと意味を説明してない)
ことがすごく残念です。
べじぱみゅのビューティフル・スタディを訪れていただいた方は
是非、式の意味を考えて、より高級なお仕事に励んでください。
応用編その2、最後のテーマは
2階微分
です。高校生の方にはけっこう難しいので、大学生向けです。
もちろん高校生の方でも、ご興味があれば是非読んでみてください。
このテーマをわざわざ1回分かけてお話しする動機としては
ワタクシが昔から強く思っていたことがありまして
2階微分は超重要なのに
どんなテキストでも
あっさりとしか書かれていない
からです。「微分」そのものについては
いろいろとじっくり説明した文書があるのですが
この「2階微分」についてはじっくり書いてある文書を見たことがない。
2階微分は、表記の仕方としては

こんな感じになります。要は2回微分したものです。
微分なんか1回で十分!なんで2回もせなあかんねん!
と言いたくなるかもしれません。
これも残念ながら、高校生の段階では必要性がわかりにくいのですが
世の中の法則は、ことごとく
2階微分で表現されている
という事情があります。例えば物理の序盤で出てくる
「運動方程式」。高校の教科書では
F=ma
となっています。力Fと質量mがわかると、「加速度」aがわかる
というシロモノなのですが、実際には
「加速度」だけわかってもしょうがない
という場面がすごく多いのです。
何かのモノに力がかかるとして、そのモノの「加速度」だけ
わかったとしても、実はあんまりうれしくなくて
一番知りたいのは「そのモノがこのあとどこへ行ってしまうのか」
であることが圧倒的に多い。
ほんで実は「加速度」って「位置」の2階微分なので
さっきの運動方程式、数学的にちゃんと書くと

となります。高校ではこれを扱うことはないのですが
大学ではデフォルトになるので「ふ~ん」ぐらいに思っててください。
さて、その2階微分は、1階の(普通の)微分に比べて
意味がわかりにくいものです。1階の微分には
傾き
という、実体とリンクさせやすい明確な意味があります。
はたして2階微分にそういう意味があるのでしょうか?
あります!明確な意味があります!
そもそも微分の定義の意味は
ちょっとだけ進んで増えた分を
その進んだ分で割ったもの(つまり傾き)
です。このノリで2階微分の意味を考えると
ちょっとだけ進んで傾きが増えた分を
その進んだ分で割ったもの
となります。これをお絵かきで表現するとこんな感じ。

上図中央の「x」の両サイドで「傾き」がどれだけ変わったか
を考えます。xの両サイドの「傾き」を出すために
xから「ちょっとだけ進んだときの変化率」と
「ちょっとだけ戻ったときの変化率」を考えましょう。
で、それらが「増えた分」を、そのちょっとの距離で割る
という作業をするわけです。やってみると

こんな感じになりました。
分母はなにやら「ちょっとの距離」の2乗です。そっちは置いときます。
(実はこれ、けっこう面倒臭い議論になっちゃいます。
機会があれば別の会でお話ししましょう)
今回はこの分子を考えます。分子は何でしょう?
よ~く見ると

こうなりますね。最初の部分は、ちょっと右にいった点と
これの意味は明確で
両サイドの平均との差(の2倍)
です。以上より、2階微分の「図形的な意味」は
f(x)のある点と、そこから
「ちょっとだけ両サイドに行った2点の平均」
との差
を、ちょっとの距離の2乗で割ったもの
となります。復習ですが「1階微分」のほうは
f(x)のある点と、そこから
「ちょっとだけ進んだ点」
との差
を、ちょっとの距離で割ったもの
ノリがわかってきましたか?
高校数学では、2階微分は「凸」の判定に用います。
例えば2階微分がプラス、ということは

これがプラス、ということです。ということは
その点は、両サイド2点の平均より下にある
ということになります。逆に2階微分がマイナスの場合
その点は、両サイド2点の平均より上にある
ということになります。これをお絵かきするとこんな感じ。

いろいろなテキストで「2階微分による凸判定」
の話をするとき、たいていは
・2階微分は「傾きの変化率」
・「傾きの変化率が正」→「→↑」こんな状態→下に凸
・「傾きの変化率が負」→「→↓」こんな状態→上に凸
みたいな議論をしています。
これはこれで正しいのですが、なんとなく
ごまかされているというか、直接的じゃないというか。
それよりも、実は2階微分の式そのものが
「両サイドの平均との差」を表している、と言われたほうが
少なくともワタクシは直接的な気がして好きです。
この話を知ってると方程式にビビらなくなります。
たとえば、サインコサインの回でお話した弦の振動。
あれを大学生の数学を使って真面目に書くと

こんな感じになります(本当は「偏微分」なのですが、どっちでもいいです)
「y」は弦の垂直方向の「変位」です。
この式をいきなり見せられても、もちろん高校生はわからないし
理系の大学生だって、意味をちゃんと分かっている人は
おそらくほとんどいません。
今回の話が関係するのは右辺の2階微分のところです。
実は右辺は「F=ma」の「F」の部分に相当します。
「T」は弦の張力です。
今回の議論では、「2階微分」とは
「両サイドの平均との差」、もっと言うと
「上下への突き出具合」を表しています。
これを踏まえて右辺を日本語に翻訳すると
・上に突き出ている部分は下に引っ張られる
(2階微分がマイナス)
・下に突き出ている部分は上に引っ張られる
(2階微分がプラス)
と言っているだけです。
当たり前のことしか言ってません。
「2階微分」の意味を考えないで大人になってしまった人は
さっきの式を見ても、それを単なる「式」としか認識せず
意味もわからずだらだら計算するだけの劣化AIになってしまうのですが
ちゃんと意味を考えれば、すんなり受け入れられます。
最初にも言いましたが
2階微分は世の中の物理現象の方程式にことごとく登場する割に
数学のテキストで扱いが軽い(ちゃんと意味を説明してない)
ことがすごく残念です。
べじぱみゅのビューティフル・スタディを訪れていただいた方は
是非、式の意味を考えて、より高級なお仕事に励んでください。
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